様々な分野の第一線で活躍する一流のプロたち。その仕事には、どのような試行錯誤があり、それをどう乗り越えているのだろうか。その道をリードするプロフェッショナルたちの言葉から、仕事の醍醐味、奥深さを感じ取って欲しい。

プロフェッショナルが語る私の仕事道

やりたいことをイメージしたら
とにかく言葉にする
それが、実現につながる

市場のニーズに応えるため、静止画から動画の映像技術へ

 世界中で高い評価を得ているコンピュータ用モニター「EIZO」で知られる株式会社ナナオ。大手電機メーカーが、次々と新商品を発表する液晶テレビ市場で、同社が2004年に開発した「FORIS.TV(フォリス)」は、スタイリッシュなデザインと高画質、高音質というこれまでにないスタイルの液晶テレビとして、注目を集めた。この「フォリス」開発チームのリーダーとして、プロジェクトを成功に導いたのが、映像技術開発部・シニア開発マネージャーの橋本雅之さんだ。

「今後、テレビとパソコンの機能の違いはどんどんなくなり、両方の機能を兼ね備えた商品が主流になってくるはずです。このような市場のニーズに応えるために、これまで培った静止画の映像技術に加えて、動画の映像技術を確立しなければいけないと主張しました」

  橋本さんの提案がきっかけとなって、同社初の液晶テレビの開発はスタートした。「開発の狙いは二つ。一つ目は、動画の映像技術を確立すること。二つ目は、EIZOブランドのプレゼンスを向上させること。当社の製品は官公庁や法人ユーザー、特定業務用途が多かったので、一般消費者向けの商品を提供することで、世界で認められた当社の技術をより多くの人に知ってもらいたいと考えたのです」。

プロジェクト開始。試作を繰り返しながら目指す方向性を探る

 2003年に、営業、企画、開発、販売促進、サポートなど各部署の代表8人で構成されたプロジェクトが発足、液晶テレビの開発が本格的に始まった。

  しかし、商品企画と開発を同時にスタートさせたために、全体の方向性が定まらず混乱する場面も多くあった。社内の一部屋を貸し切り、連日連夜こもりっきりで話し合いが繰り返された。商品企画のアイデアを出し合い、その度に試作を繰り返す。何度もやり直した。
「『商品企画を明確に定めてから、開発をスタートする』という本来のプロセスをあえてくずしたのは、新しいことにチャレンジするというモチベーションを大切にしたかったから。みんなの気持ちが高まっている時にスタートしたかったんです。ただ、時間と労力を費やして試作を作っても実際の商品に使われないことも多くあったため、開発メンバーのモチベーションが下がらないように、やり直しやボツになったものは、その過程を細かく説明して、納得した上で次に進めるように気をつけました」

  静止画の映像技術ではスペシャリストがそろう同社だが、動画に関してはこれまでとは違う技術が要求され、壁にぶちあたることもあったそうだ。だが、橋本さんは妥協しなかった。映像制作者の意図を忠実に表現する液晶テレビを目指していたからだ。
「人物が立ち去った後に背景に映る影など、細部まで正確に表現することで、制作者の意図をきちんとユーザーに伝えることができ、そこから新たな感動が生まれると考えたからです。この点にこだわったことで、当社ならではの画質が生まれたと思います」

技術を進化させ、ナナオ独自のスタイルを追求する

 プロジェクトが発足してから一年後に念願の液晶テレビが完成した。新商品は、「新しい映像を見る扉」という想いを込めて、ラテン語で扉という意味を持つ「フォリス」と名付けた。その後も、約一年ごとに新製品を開発し、大手電機メーカーの商品とは一線を画した液晶テレビとして独自のポジションを築いている。

  昨年11月には、三代目となるフォリスを発売。スタンディングフォルムに地上デジタル放送対応とDVD機能の搭載を実現した。「フォリスは、まだスタートしたばかり。ナナオならではの独自のスタイルをキープしながらも、技術的にはさらに進化させていきたいですね」。

  市場のニーズに応えるだけでなく、それまでとは違うプロセスで生まれた「フォリス」。その道のりを橋本さんはこう振り返る。「有言実行。やりたい仕事が浮かんだら、イメージの状態でも、とにかくいろんな人に言ってみる。言ったからには実行しないといけなくなりますから。そうすることで、実現していくんです」。

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