福井のものづくり企業の活性化を目指し、プロジェクトスタート
福井県の中小企業とデザイナーが連携し、キッチン回りの商品を提供する「おいしいキッチンプロジェクト」。2005年に誕生、現在、ネット販売と取扱店舗200店にて全国で販売。おしゃれなデザインと優れた機能性が魅力で、全国誌でも紹介、来年度から海外での販売が計画されているほどの人気ぶり。デザイナーとものづくり企業がタイアップしたプロジェクトの成功例としても、注目を浴びているこのプロジェクトを成功に導いた人物が、二口誠一郎氏だ。
「おいしいキッチンプロジェクト」誕生のきっかけとなったのは、2002年に、当時の福井市長の呼びかけで発足した「地域産業創造会議」。福井の地場産業を活性化させるため、30代の若手経済人で構成された。二口氏は、青年会議所の副理事長を務めていた実績を評価され、推進委員長に任命された。「はじめに、ものづくり企業の社長に現在の悩みを聞きました。この時分かったことは、真面目で自社の技術に誇りを持っている方が多いということ。しかし、その一方で、商品の一部、パーツを製造している企業が多く、ものづくりは得意だが、単独での商品開発やPRが苦手であること、企業同士の連携が弱いと感じました」
そこで、この問題を解決するためのプロジェクト「第一次プロダクトX」を結成。公募誌、インターネットを通じて集めた一般消費者の声からアイデアを生み出し、大豆原料を使ったアイスクリームや教材用の太鼓など、製品化を実現した。
しかし、ここで予期せぬ問題が発生した。百貨店、雑貨店に商品をセールスにいっても、置いてもらえないのだ。「他はどんな商品があるの? と必ず聞かれました。例えば、アイスクリームであれば、数多くの商品が並んでいるなかで、一種類だけ置くためにスペースを確保するわけにはいかないというわけです。一つの商品を開発することに集中して、売る仕組みまで考えていなかったことが最大の失敗でした」。
第一次プロダクトXの活動を通じて、自社商品を作ること、企業同士の連携をもつことへの自信はできた。しかし、商品が売れなければ、ものづくり企業の活性化にはつながらない。地域産業創造会議に与えられた期間は3年間。二口氏に残された時間は、あと一年半だった。
失敗を糧に、新たな戦略を練り、売るための商品を開発する
まずは、なぜ売れなかったのかを徹底的に検証。知名度、価格、ラインナップの豊富さ…。様々な課題が挙ってきた。この反省点をふまえて、次は、「いかに売るか」に力点をおき、「売るための商品開発」に徹底的にこだわったという。「以前集めた一般消費者の意見からヒントを得て、おいしくご飯を食べようというコンセプトで、『おいしいキッチンプロジェクト』を開始することに決めました。第一次プロダクトXの反省を活かして戦略を練り、キッチン回りに限定して商品を開発し、一コーナーを設けて販売できるようにしたり、事前に調査した上で価格を決定し、それを超えない範囲で商品を開発するなど、商品開発と同時に販売についても考えました」。技術力だけを全面に押し出したり、デザイナーがつくりたいものではなく、消費者が欲しいと思うものを目指して開発した商品が認められ、発売開始直前に東京で開かれた展示会では、4日間でバイヤーやプレス関係者約700人が訪れ、全国誌でも紹介された。
2006年に地域産業創造会議は解散。「おいしいキッチンプロジェクト」は、行政から民間の任意団体に移り、二口氏の経営する株式会社リンクコーポレーションが販売部門を請け負うことになった。
「プロジェクトがスタートした頃は、少ない予算で一つのブランドを立ち上げるなんて無理だと言われることもありました。しかし、成功する可能性が少ないから諦めるのではなく、できる可能性にかけて、最大限のことをしようと考えました。また、今まで脚光をあびなかった自社の製品が、表参道ヒルズ、青山のショップに並ぶ、素敵な商品だねと人からほめられることで、ものづくりに携わっている人たちがすごく楽しそうになったことも原動力となりました。彼らの姿から、やる気や情熱をもらうことで、ここまでやってこれたと思います。最終的には、参加企業が、おいしいキッチンから自立し、自社だけで商品を開発、販売できるようになることが目標ですね」。