正しいと信じる野球を教えるため、独立リーグの監督に
平成19年に、産声を上げたプロ野球独立リーグ「北信越BCリーグ」。全72試合の熱戦が繰りひろげられた中、石川ミリオンスターズを初代チャンピオンに導いた人物が、金森栄治監督だ。
現役時代は、「死球王」の名でファンから愛され、西武ライオンズ、阪神タイガース、ヤクルトスワローズで活躍した金森監督。引退後も、数々の球団でコーチを務め、城島健司選手や井口資仁選手など大リーグで通用する選手を育ててきた。コーチとしての実力も評価されていた金森監督が、石川ミリオンスターズの監督に就任したのは、開幕の5カ月前。自らを監督の器ではないと語るその心を動かしたのは、石川ミリオンスターズの端保社長の熱い思いだった。「社長から、あなたしかいないと言われまして。熱意に負けましたね。それと、初代監督というのも、引き受けた理由の一つです。コーチ時代に、『自分が正しいと信じる野球を思い通りに教えたい』という気持ちが強くあったので、チームがゼロの状態から、監督という立場で指導できることに魅力を感じたのです。初代でなければ断っていたかもしれません」。
金森監督は、「野球は、とにかく基本が大事」だと語る。「まずは、正しい基本を身につけることです。基本をしっかりと身につけている選手は伸びます。そして、正しい基本を身につけるために、なぜそうしなければならないのかという理屈を説明する。『なぜ』の部分、つまり動作の原理を理解して練習すれば、自然とレベルは上がっていきます。私は、現役時代、監督やコーチから教えられるままにやってきました。引退の2年前くらいになってやっと、今まで教えられたことの意味が分かったんです」。
シーズン開幕。結果がでない、もどかしい日々が続く
4月にシーズンが開幕。石川県初のプロ野球チームとして、地元のファンの期待を背負ってスタートしたものの、思い通りに勝てない試合が多く、厳しい状況が続いた。「開幕当初は、さほど気にしていなかったのですが、7、8月になっても結果がなかなかでず、もどかしい日々が続きました。しかし、前向きに頑張っている選手をみて、辛抱しました。結局は、選手、そして自分を信じるしかないと思ったのです。正しいことをやっていれば、結果は後からついてきます。失敗することは悪いことではありません。正しいことをやって失敗しても、次は成功する可能性があります。目先の成功にとらわれてやり方を変えても、長続きしませんから。1カ月先、半年先、1年先に成功するために、今、正しいことをやること、そして続けることが大切なのです」。
金森監督は、継続することが好きだという。続けることで、何かが必ずプラスになるから、と。「私は中学、高校、社会人、プロ野球時代ずっと素振りを続けてきました。朝は、球場に早く行き、夜は練習が終わってから。体が小さく、基礎体力も人並みでしたが、ずっとバットを振り続けた分だけ力がつきました。プロで15年もやれたのは、このおかげかもしれません」。
9月後半から一気に調子を上げ、10月16日に、ついに優勝。石川県立野球場が、ファンの歓声に包まれた。そして、シーズン後には、チームの内野手として活躍した内村賢介選手が、東北楽天ゴールデンイーグルスの育成ドラフトに指名された。大きな結果を2つ出したシーズン1年目を終えて、金森監督はこう語る。「監督は、一人ではできないということを痛感した1年でした。同じ志を持って指導してくれるコーチ、支えてくれるファンの存在、野球ができる環境をつくってくれる運営会社やスポンサー。みんなの存在があってはじめてできる仕事です。プロ野球に比べると、練習環境も、選手も、球団運営もまだまだ未熟ですが、みんな野球が大好きでやっている人ばかり。それがチーム全体の絆になり、力になってます」。
来シーズンから6球団のリーグ戦になり、名称も「北信越BCリーグ」から「BCリーグ」に衣替え。ライバルが増え、今年以上の激戦を予想させる来シーズンに向けた目標を問うと、「今以上に、みんなから愛されるチームに育てたいですね。そのためには、試合に勝たなければなりません。負ければファンの応援を無駄にすることになりますから。ゆくゆくは、石川のシンボルになるようなチームに育てたいです」と力強く語ってくれた。