様々な分野の第一線で活躍する一流のプロたち。その仕事には、どのような試行錯誤があり、それをどう乗り越えているのだろうか。その道をリードするプロフェッショナルたちの言葉から、仕事の醍醐味、奥深さを感じ取って欲しい。

プロフェッショナルが語る私の仕事道

経験論だけでは不十分。学問的な裏付けも必要なこと

名刺交換でさえも満足にさせてもらえなかった時代

 「会社を起こした当初は、営業活動中に名刺交換をするだけで『ご主人のご飯作らんがか』と説教されたこともあります。今は女性の社会進出も珍しくなくなっていますが、それでも組織内のジェンダーの問題は解消されきってはいないのが現状です」と語るのは、株式会社ジーアンドエス代表取締役社長の萩原扶未子さんだ。同社では北陸三県を中心に、組織内ジェンダーの活用や、起業に関するコンサルティング業務を行なっており、その傍ら、異業種交流会や大学、商工会の主催するセミナーで、ジェンダー特性や起業に関する講演会を行なっている。

ここでいうジェンダーとは生物学的な性差ではなく「社会的・文化的に形成された性」のこと。「男らしさ」「女らしさ」といった、人間が日々の営みの中で、形成した概念のことである。

25歳で会社を起こした萩原さん。対外的には、心ない言葉を投げかけられたり、時には「男だったら…」と思うこともあったという。さらに、自身の会社を運営していく上でも、仕事に対する男性と女性の価値観の違いによって悩まされた場面もあったそうだ。自己流で学び、異業種交流会などで同じ経営者という立場の人々と出会い、悩みを解消していくことで、事業を軌道に乗せた萩原さん。しかし、8年前、父と溺愛していた犬の死をきっかけに、自分の時間を大切にしたいという思いが芽生え、会社の名前だけは引き継ぎ、組織業務は、会社を持ちたいという知人に譲渡した。

理論を学ぶために大学院に通い始める

 ジェンダーの違いに悩み、それでも会社を軌道に乗せたという経験を活かし、女性向けの講演会やコンサルティングを行なっていく中、萩原さんは経験論だけでは不十分なことに気付き、大学院に通うことを決意する。「単なる体験談ではなく、本当に役に立つ話をするためには学問的な裏付けが必要だと感じました。理論を学び、それを伝える方法を知りたいと思ったんです」と萩原さん。女性特有の考え方や環境をいかにして社会に活かしていくかを考えることが、これからの女性起業支援には必要不可欠だと考え、研究テーマは「女性起業家創出の支援」とした。

研究の場として愛知県の南山大学大学院を選んだ萩原さん。会社の業務を進めながらの通学は苦労も多かったという。「講義中に顧客から電話が掛かってきて、どうしても講義を抜けないといけない場面があったりもしました。教授の理解があったため、なんとかなりましたが」と当時を振り返る。萩原さんは、さらなる研究のため、今年の4月から金沢大学大学院に通っている。

地方で成功モデルを作り、日本を変えることを目指す

 2007年11月30日〜2008年1月27日まで、石川県金沢市の香林坊ビルで行なわれた「Dream Field プロジェクト チャレンジショップ」。このプロジェクトは、起業を目指す人にブースを提供し、萩原さんをはじめとする起業のプロたちが経営報告などに合わせてノウハウを伝え、実践するというものである。主催は「女性起業家交流会 in HOKURIKU」と「財団法人 商工環境開発センター」。萩原さんはそのプロジェクトの代表を務めた。
女性の社会進出も活発になり、女性経営者が増えたといっても、公的機関が行う起業セミナーなどは、女性にとって敷居の高いものが多いのが現状である。「経営に必要な決算書など、男性よりも女性は馴染みのないことが多い。だから、男性に合わせたセミナーでは女性のやる気が削がれてしまう。同じ悩みをくぐり抜け、起業を知っている人間が女性の特性を理解した上で、ノウハウを教える必要がある。その一環がこのプロジェクトなんです」と萩原さん。
自身の経験に学問の裏付けを得て、それを女性支援のために活かしている萩原さん。最後に今後の目標を語ってくれた。「行政と民間の間に入り、さらに日本のジェンダー活用を推進していきたいと思っています。今年度、私の研究テーマを政策提言にまで発展させて、金沢市の女性経営者に対する待遇を改善できました。これからもジェンダー論を追求し、女性起業家支援を続けて、地域から日本を変えていきたいですね」。

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